コラム
チャッピーはあなたの考えを表現できるか
総務省の調査(1)によれば、アメリカ・ドイツ・中国では、生成AIを、コンテンツの要約・翻訳や調べものはもちろん、画像や動画の生成や対話型AIとの会話等、幅広い目的で盛んに利用しているようだ。一方わが国では、コンテンツの要約・翻訳や調べものが中心だとされている。本当にそうだろうか。調査に正直に答えたくない人もいるのかもしれない。
Nさんは大学生だ。レポートの締め切りがもうすぐなので、パソコンを起動した。ワープロソフトと生成AIのチャッピーを開いて準備万端。さあ、早く終わらせよう。Nさんはチャッピーに課題の概要を入力して、レポートを書かせた。チャッピーが生成した文章を読んで、「なんか良さそう」と思う。けれど、少し引っかかるところもある。そこで、チャッピーに追加で入力する。
「もっとわかりやすくして」
「大学生らしい文章にして」
「別の言い方にして」
すると、チャッピーはすぐに別の文章を出してくれる。Nさんは、その中から良さそうな文章を選ぶ。だけど、レポートの字数が足りない。そこでチャッピーにさらに別の文章を出してもらう。そこからも使えそうな表現を拾う。そうやって、いくつもの文章を見比べ、“おいしい”ところをつぎはぎしていく。こうして、なんとかレポートを完成させた。時間を見ると、3時間ぐらい経っていた。レポートを提出して寝よう。
Nさんはうまくやったと思った。
後日、Nさんが返却されたレポートを見ると、残念ながらNさんのレポートが良い評価を受けることはなかった。改めて読み返してみると、文章が長いわりに、話があまり前に進んでいないことに気づいた。またやたらと横文字が多く、気になった。Nさんは反省して、レポートを書き直し始めた。しかし、Nさんはこのレポートをどのように直していいかわからなかった。そもそも自分で提出したレポートの内容が、自分でも理解できないのだ。
生成AIは、上手に使えば、便利なツールとなる。あなたが言葉に迷ったときや、文の流れを整えたいときには、とても役に立つ。しかし、生成AIが出してくる文章は、こちらが求めている内容を正しく理解して書いているわけではない。さまざまな文章をもとに、あなたが求める文章を組み立てている。それらは、一見すると立派に見える。けれど、立派に見える文章が、相手に伝わる文章とは限らない。むしろ、自分が何を言いたいのかがあいまいなまま使ってしまうなどのことがあると、あなたの考えが見えにくい文章になるだろう。
生成AIの利便性にのまれそうになる、一方で、生成AIはインターネットの知見を提供してくれる。あなたの伝えたいことを生成AIにうまく伝えることができれば、本当に伝えたい人にもより伝わるはずだ。
参考文献
- (1)総務省. “国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書”. 2025-03.
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r07_02_houkoku.pdf, (参照 2026-06-09).
コラム一覧
- ① エゴサと個人情報
- ② チャッピーはあなたの考えを表現できるか